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第四十八話:愛の巣を失いたくない
生後一ヵ月が経った匡は、身長も体重も平均的になった。
抱き上げるとひゐろと目が合い、少し笑うような表情を見せることがあった。
ひゐろもそれを喜び、顔がほころんでいく。
―――愛しい我が子。
匡が一人前になるまで、何とか育て上げなくてはならない。
ひゐろはそう思いながら匡を抱き、背中をたたいて子守唄を歌った。
花代の話を聞いて、ひゐろは産褥期が過ぎた後、どのように過ごそうか。
ひゐろは、それを考えていた。
産休中は何とかこれまでの蓄えで、本所區の家賃を支払ってきた。
しかしこれからは、匡を育てながら生きていかなくてはならない。
―――すぐに働きたい。
ひゐろはまず、そう思った。
しかし、どのように働けばいいのだろう。
一時は、洋装姿のカフェ女給に憧れたけれど、あのカフェ内における同僚や先輩との関係も大変そうだ。
しかも丸の内『カフェー・ユニット』の仕事を、一から学ばなくてはならない。
場合によっては、向かずにやめなくてはいけないかもしれない。
やはり、オートガールの仕事を続けるしかないのかな、とひゐろは思った。
花代さん同様、夫の気持ちが気になるが、私も毅然として働けばいい。
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