第四十八話:愛の巣を失いたくない

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ただ、働いている間、匡をどうしたらいいのだろう。 その日の夜、ひゐろは民子の部屋に行った。 「……お母様、ちょっといい?」 「ひゐろ?いいわよ。どうぞ」 ひゐろは襖を開け、部屋の中に入った。 民子は蚊帳(かや)をつけている最中だった。 「そろそろ、蚊帳(かや)もしまう頃ね」 「そうね。ずいぶん涼しくなってきましたし」 「今日はね、中秋の名月の用意をしていたの。三方(さんぼう)を出したり、上新粉やお野菜を買ってきたりしたのよ」 民子は蚊帳(かや)を広げながら、そう言った。 「そういえば、そろそろ中秋の名月ですね。お母様。お疲れのところごめんなさい」 「……どうしたの?何か用事?」 「ええ。これからのことを相談したくて」 「これからのこと?」 「産褥期が終わったら、働こうと思って。これから匡にも、お金がかかるでしょう?」 「すぐに働くの?」 「早いほうがいいと思っている」 「働き先は、あのオート……」 「オートガールよ。当面、私が働ける仕事は、それしかないの」 ひゐろは、強い口調で言った。 「働くと言っても、匡はどうするの?それに本所()仕舞屋(しもたや)は、どうするつもり?」
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