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第四十九話:女中から聞いた話
母の言葉は、非常にありがたいものだった。
言葉通り、素直に甘えてしまえばいいのかもしれない。
ただあの家を引き払ってしまったら、夫はきっと驚いてしまうだろう。
引き払うことを夫に相談するということも考えたが、もし出所することになったら。
すぐに妻の家の下宿に居候するというのも、何とも決まりが悪いに違いない。
まずは夫に、気持ちも心も安らげるような環境を整えてあげたいと、ひゐろは思った。
「お母様、いろいろとお心遣いをありがとうございます。産褥期が過ぎたら私は働きに参りますが、働いている間はお母様に匡を預かっていただけないでしょうか」
「ええ。もちろんよ。こんなにかわいい孫ですもの」
「ただ……」
「ただ?」
民子は、ひゐろにたずねた。
「本所區の自宅は、引き払いません。あの仕舞屋は、私たちの自宅ですから」
「……」
「お母様のお言葉に甘えて、私も匡もしばらくは本郷のこの家に居候をさせていただきたく存じます。その間、本所區の仕舞屋は、ときどき様子を見に行きます。そして匡が一人でお留守番ができるようになったら、本所區に親子で帰るつもりです。それで許していただけないでしょうか」
ひゐろは民子に頭を下げて、嘆願した。
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