第四十九話:女中から聞いた話

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「……もちろん、それはいいけれど。でもその分、家賃を払い続けなきゃいけないのよ。少しもったいない気がするけれど、大丈夫なの?」 「その分は、稼ぎます。お得意様を見つけるし、これまでのお客様にも来ていただくわ」 ひゐろは、微笑んでみせた。 「わかったわ。それでひゐろが良いのなら」 民子はひゐろの提案を、受け入れた。 「……ありがとう。お母様。近々、小菅監獄(こすげかんごく)へ行くわ。まだ夫は一度も、匡に会っていないのですから」 「そうね。斎藤さんも、匡の姿を見たいでしょうから」 「ええ。それでは、おやすみなさい」 ひゐろは民子の部屋を出ていき、廊下を歩いた。 意地を張ったものの、ひゐろは今後のことが不安だった。 本当に家賃を払いながら、匡を育てられるのかと。 ただ、思い悩んでも状況が変わるものではない。 とりあえず今晩は、ぐっすり眠ろうと思った。 翌日、朝食を食べ、自室でひゐろが匡をあやしている時のことだ。 「……お嬢様、よろしいでしょうか。匡さんの襁褓(おむつ)を洗っておきました」 女中が、()の向こうから声をかけてきた。 「忙しい中、いつもごめんなさいね。産褥期(さんじょくき)が過ぎたら、私がやりますから」
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