第四十九話:女中から聞いた話

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「いえいえ。この時期はゆっくりしておいてください。私はこの家にご奉公できて、非常にありがたいのです。最近の職業紹介所では女中の求人を出すと、(おびただ)しい数の志願者がいらっしゃるとお聞きしています。その点私は、長いことこちらで働けて、本当に感謝しています」 女中は、きれいに畳まれた匡の襁褓(おむつ)を差し出し、そう話した。 不況の影響は、女中の仕事にも影響を及ぼしているのかとひゐろは感じた。 「しかも最近、洋食店ではお客様の接待に、女性と二人で車に乗って近隣を一周するといったサービスを行っているとお聞きしています。女中の求人に採用されなかった女学生は、そっちに流れているとか。それで学資を補っているというお話です」
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