第五話:『平和記念東京博覧会』での再会

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また全国の特産品を展示していることもあって、全国から来場者が集まっているようだった。 “『平和記念東京博覧会』は、七月三十一日まで開催” ひゐろは、しばらく開催されているのだなと思った。 ただ、自分自身が身重であること、そしてオートガールのお客様との話のタネにするには、早く出かけたほうがいいと思い立つ。 ひゐろは早速、銘仙の着物に着替えた。 そして本所吾妻駅から市電に乗り、上野駅に向かった。 上野駅からは徒歩で、上野恩賜公園へ進んだ。 第一会場は上野恩賜公園、第二会場は不忍池の一帯であったため、 まずは第一会場から行こうと思っていた。 上野恩賜公園には、入場客がずらりと並んでいた。 約十五分待ってはじめて、入場することができた。 入場してすぐに、『金線サイダー』の看板が見えた。 『金線サイダー』とは、リンゴ味の炭酸飲料である。 ひゐろは看板を見た途端、『金線サイダー』を飲みたくなり、お店に入って注文した。 それを日本式の建物である玉塚休憩所で飲みながら、お客さんの姿をながめていた。 夫婦、子ども連れ、会社員など、老若男女の姿がそこにあった。 「…こんなところで、何をしているの?」
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