第五話:『平和記念東京博覧会』での再会

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ひゐろの背後から女性の声がした。 ひゐろが振り返ると、そこには花代と二人の息子が立っていた。 「……母ちゃん、僕も金線サイダーが飲みたい!」 花代の下の息子がそう言って、花代の手を引っ張った。 「わかったわ。あとで買ってあげるから、ちょっとお待ち」 「花代さん、お子さんとここへ?」 「ええ。うちは二人とも、上野恩賜公園が好きでね。ここにも『連れて行って』と言われて」 「そう」 「せっかくだから、私たちといっしょに回らない?子どもがうるさいかもしれないけど」 「……ええ、ぜひ。私もお子さんといっしょのほうが、楽しいわ」 花代に誘われ、子どもたちとともにひゐろは『平和記念東京博覧会』を回ることにした。 二人の子どもも金線サイダーを飲みながら、上機嫌で『平和記念東京博覧会』を見て回った。 子どもたちが最初に惹かれたのは、文具館であった。 ここは東京府の文具商組合が企画したもので、最新の文具がずらりと並んでいた。 ぬりえや六色鉛筆を見たとたん、花代の下の息子の次郎は駄々をこねはじめる。 「買って!」と言って、泣き出す始末であった。 「こないだクレオンを買ったばかりでしょう?今日は、買いませんよ」
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