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第六話:小夜と小夜の恋人との不思議な関係
「花代さん、小夜さんをご存知なのですか?京橋の旅館にお泊まりになったとか?」
ひゐろは、花代にたずねた。
「いいえ。私が彼女に出会ったのは、堺利彦氏の演説会場よ」
斎藤の逮捕理由だ、とひゐろは思った。
「えーと……どこだったかしら。大和座ではないわね。……團子坂下演藝館じゃないかしら」
「團子坂下演藝館?」
そういえば、斎藤からその名称を聞いたことがあったとひゐろは思う。
「あの女性がつきあっていた男は、帝大生じゃないかしら?確か斎藤さんと顔馴染みのはず。三人が話しているところを、見たわ」
「小夜さんと小夜さんの恋人と、斎藤さんが?」
斎藤と小夜が繋がっていたなんて、ひゐろは夢にも思わなかった。
「小夜さんの恋人は、團子坂下演藝館で印刷物を配っていたのでしょうか」
「私はその現場を見ていないから何とも言えないけれど、その可能性もあるわね」
少なくとも小夜の恋人は、堺利彦を支持していたのは間違いないのであろう。
その男は、斎藤と共に警察に捕まったのであろうか。
花代がそう答えた後、小夜がコロッケ定食を運んできた。
「……お待たせいたしました」
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