第六話:小夜と小夜の恋人との不思議な関係

1/4
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ

第六話:小夜と小夜の恋人との不思議な関係

「花代さん、小夜さんをご存知なのですか?京橋の旅館にお泊まりになったとか?」 ひゐろは、花代にたずねた。 「いいえ。私が彼女に出会ったのは、堺利彦(さかいとしひこ)氏の演説会場よ」 斎藤の逮捕理由だ、とひゐろは思った。 「えーと……どこだったかしら。大和座ではないわね。……團子坂下演藝館(だんござかしたえんげいかん)じゃないかしら」 「團子坂下演藝館(だんござかしたえんげいかん)?」 そういえば、斎藤からその名称を聞いたことがあったとひゐろは思う。 「あの女性がつきあっていた男は、帝大生じゃないかしら?確か斎藤さんと顔馴染みのはず。三人が話しているところを、見たわ」 「小夜さんと小夜さんの恋人と、斎藤さんが?」 斎藤と小夜が繋がっていたなんて、ひゐろは夢にも思わなかった。 「小夜さんの恋人は、團子坂下演藝館(だんござかしたえんげいかん)で印刷物を配っていたのでしょうか」 「私はその現場を見ていないから何とも言えないけれど、その可能性もあるわね」 少なくとも小夜の恋人は、堺利彦を支持していたのは間違いないのであろう。 その男は、斎藤と共に警察に捕まったのであろうか。 花代がそう答えた後、小夜がコロッケ定食を運んできた。 「……お待たせいたしました」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!