64人が本棚に入れています
本棚に追加
でも働いている姿を、見てほしいともひゐろは思った。きっと父も自分の働いている姿を、娘に見せたかったのではないか。
「お父さんは、あなたが働いていることを知っていたわよ。もちろんどのような仕事なのかは具体的にはわからないけれども。『ひゐろも自立したんだな』と言っていたわ。頑固なお父さんだけど、あなたに理解を示そうとしていたわ」
「……そう」
「私と銀座の時計台で会った日に、ひゐろが一人暮らしの準備をしていることをお父さんに伝えたわ。自立していたばかりのあなたを心配しているからこそ、二十圓札を用意してくれたのよ」
「……そうだったわね」
ひゐろの目から、涙がこぼれ落ちた。もう少し、成長した私を見て欲しかった。
涙を拭いながら、ひゐろは再び口を開いた。
「お母様。先日、病院へ行って調べたわ。私は妊娠しているの」
最初のコメントを投稿しよう!