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「かっこいい!」
「すご〜い、じょうずぅ」
黄色い声援がカラオケボックスに飛び交った。女性達からの喝采に応じたあと、友人は僕の隣に座る。
「お前の番だぜ」
友人が脇腹を肘で突いてきた。視線を斜め下に落とす。ズボンのポケットから顔を出すヒヨコと目が合った。ヒヨコが深く頷いた。
「いよっ、待ってましたぁ」
「がんばってぇ!」
盛り上げる友人。色めき立つ女性達。緊張が高まる中、前を向いて咳払いする。
――不思議と喉の痛みもなくなったし、大丈夫だ。
マイクを強く握りしめ、歌おうとした。が、
「コケコッコー!!」
自分の口から飛び出した高い鳴き声。一同が静まり返った、直後。
「キャー!!」
「何だあれは!?」
友人と女性達が指差す方向に目をやり、息を呑んだ。何と、ガラスを覆い尽くすほどの鳥達が窓にへばりついていた。
「だから言ったピヨ?」
ヒヨコが肩に乗ってくる。
「メス達をメロメロにする歌声が手に入るって」
ヒヨコはさえずるように声を弾ませた。
「これぞおれっぴが追い求めた理想ピヨ!」
「コケー!!」
僕は奇声を上げる。ガラス片が飛び散ったかと思えば、鳥達は部屋の中へと押し寄せてきた。
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