千二百デニールの壁

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***  あれから数年経つが、私はあの日以来、あの黒タイツの姿を見ていない。  あの日、目を覚ましたとき私は床に倒れ込んでいたのだが、例の黒タイツはどこにもいなかった。妹に尋ねても、そんなタイツは知らないと言う。  きっと私は、悪い夢でも見ていたのだろう。あんなタイツは初めから存在しなかったに違いない、私はそう考えて納得した。    ……数年たった今でも我が家では、時折ズルッズルッと何かが伸びる音が聞こえるが。 〈了〉  
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