千二百デニールの壁

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 黒タイツが無駄にツヤツヤしているので、最終的に両脚がすっぽりと入った私は、傍から見たら美しく黒光りするマーメイドだった!  そしてさらに調子に乗った私は、どういうわけか期待してしまっていた。もしやこの黒タイツ、もっともっと伸びるんじゃないかと。    私はおもむろに腹から胸、それから肩までズルズルと入っていった。その間、黒タイツが破ける様子は一切なかったと記憶している。そして最後に頭までタイツを引き上げると、ついに私の身体は全身黒タイツの右脚側に覆われてた。 ——このタイツ、やるじゃないか!  ……あまりの衝撃に思わず涙をこぼした。私は常日頃から、商品に記載されている「売り文句」に対して懐疑的なのだが、この黒タイツはホンモノだった! 私は大いに感動したのだった。    
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