千二百デニールの壁

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 妹が去り、冷静になった私は直ぐにタイツを脱いだ。そしてびろびろに伸びたそいつを部屋の隅に放り投げ、ドサリとソファに倒れ込んだ。  しばらくすると、部屋の隅で奇妙な物音がした。その音はズルッズルッと私の方に向かってくる。疲労困憊(ひろうこんぱい)の私はため息をつき、何事かと音のする方を見た。 ——黒タイツの様子がおかしい……。 「う、動いている……? というか、自ら伸びている!!」  部屋の隅に投げ捨てられたソレは、まるで自我を持った生き物のように、ズルズルと伸び、自らのテリトリーを広げていた! 「うわぁぁぁ! こっちにくるなぁぁぁ!!!」 それが、あの日私の覚えている最後の記憶だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加