【第11話 侍の正体】

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その途端、信長は突然お濃の肩に手を回し、強く抱きしめた。 ついに信長はお濃の真心と魅力に屈してしまった。今まで必死に心を許すまいと心を閉ざし、信じる事を恐れていたが、母親に罵倒されて弱っていた心にお濃の優しさと真心のこもった言葉が突き刺さり、今まで抑えていた感情がついに抑えきれず、溢れ出してしまったのだった。 少し体を離した後、真剣な眼差しで見つめ合い、信長はお濃の頬を両手で包み込むように添えた後、強引に自分の唇をお濃の唇に何度も重ねた。 お濃は初めてのことに戸惑い、信長のあまりにも甘く激しい口づけにめまいがしそうになった。それでも信長はやめようとしなかった。 すると突然、激しい雨が降り始めた。二人はびしょぬれになり、慌てて顔を離した。 「これはひどい雨だ!風邪をひいてしまう。あそこに時々使っている小屋があるから、そこへ避難するぞ!」信長はお濃の手を引っ張りながら、小屋に向かって走っていった。 小屋に入ると、信長はさっと火を起こし始めた。 「俺は火を起こすから、そなたは急いで着物を脱ぎ、着替えて体を温めよ。」信長は小屋に置いてあった自分の着物を渡しながら言った。 「ありがとうございます。でも、この着物を濃がいただいてしまうと、殿の着替えがなくなってしまいます。」お濃は少し躊躇した。 「俺はいつも川遊びをして水に濡れるのは慣れているし、男だから大丈夫だ、心配するな。」信長はそう言うと、一生懸命火を起こし続けた。 お濃は信長のさりげない優しさに心を打たれ、先ほどの甘く激しい口づけで体がほてっていることに気づいた。雨に濡れているのに、思ったほど寒くは感じなかった。むしろ胸がドキドキして、信長に背中を向けて着替えている間も顔が真っ赤になっていった。 着替えを終えたお濃がふと見ると、信長はすでに上半身裸になり、自分の着物を火のそばで乾かしていた。お濃も自分の着物を柱に立てかけ、しわにならないように乾かし始めた。 信長の逞しい肉体をまともに見られず、お濃は慌てて目をそらした。 「お濃、何を恥ずかしがっておる。我らは婚礼も挙げた正式な夫婦ではないか。」信長は意地悪そうに笑みを浮かべながら言った。 「恥ずかしがってはおりませぬ!」お濃は負けじと意地を張り、少しすねたように顔を背けた。 「殿、それよりお寒くはないですか?お風邪を召したら大変なことになってしまいます。あそこにもう一枚殿の着物を見つけたので、今それをお持ちします」と言って立ち上がって取りにいこうと信長の横を通ろうとした途端、信長はお濃の右手をつかんで自分の方に抱き寄せた。 「殿!」 「お濃、着物は不要じゃ。そなたのぬくもりで十分温かい・・・。」
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