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【第7話 三河の若君と光秀の婚礼】
信長は時折、尾張で人質として過ごしていた三河松平家の竹千代を訪ね、一緒に相撲を取ったり、囲碁を打ったり、川遊びをして過ごしていた。竹千代の負けん気の強さと賢さを信長は気に入り、「三河の弟」と呼んで、特に可愛がっていた。
ある日、川遊びを終えた後、二人は並んで腰かけて休憩していた。
「竹千代、前に話していた美濃の“マムシの娘”が、ついに俺のところに嫁いできたぞ。」信長が突然切り出した。
「えっ?“マムシの娘”は、どんな恐ろしい顔をしているのですか?」竹千代が興味津々に尋ねた。
「なぜ、そう思うのだ?」信長は笑いながら問い返した。
「だって、“マムシの娘”だったら、それは蛇のような恐ろしい形相をしていると思うじゃないですか!」
信長は大きな声で笑った。「ハハハ…そうかもしれないな。確かに恐ろしいおなごであることには変わらぬ。どうだ、これから城に行って、マムシの顔でも見に行くか?」
「はい!ぜひ見てみたいです!」竹千代は瞳を輝かせた。
「噛まれぬように気を付けることだな!よし行くぞ!」
信長は竹千代を馬に乗せて、城へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方、その時、那古野城では、お濃が信長の妹であるお市と一緒に遊び、楽しいひとときを過ごしていた。お市はお濃との最初の出会い以来、時間を見つけては頻繁に那古野城を訪れ、お濃のもとを訪ねては一緒に遊ぶようになっていた。お市はすぐにお濃に懐き、二人はたちまち仲の良い姉妹関係を築いていた。
お市が末盛城へ帰った後、お濃は縁側に腰掛けてぼんやりと考え事をしていた。
信長の事を探っているが、いまいちどのような人間なのかつかみきれない。
(優しいと思ったら突然不機嫌になったりする。しかし、しばらくすると、また何事もなかったかのように機嫌が直っている。
子供っぽい行動ばかりと思っていたが、突然鋭い眼差しで物事を深く考えているかのような態度を見せる・・・。優しさと冷たさが同居していて、何を考えているのか分からない…。ますます混乱するばかりだわ・・・・・・。)
お濃がそんなことを考えていると、廊下の向こうから信長の声が響いてきた。
「お濃~!」
「殿、いらせませ。今日もお市どのが来て、二人で遊んでいたところでした。さきほど帰りましたが。殿と入れ違いになってしまいましたね。」
「そうか。お市ならまたすぐまた来るであろう。ところで今日は特別な客を連れてきた。普段は奥に通すことはないが、今日は特別だ。入るがよい!」信長はそう言って、7歳くらいの若君を部屋に招き入れた。
「失礼いたします」若君が畏まってお辞儀をする。
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