1.手紙

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 その後も結局、それ以外に手がかりを見つける事はできなかった。  ミスオーガンザ……家族構成も年齢も謎の女性実業家。もしかしたら、たまたま同名なだけかもしれない。 (だが、確かめないわけにはいかない)  手紙を出すより、直接会いに行った方が話が早い。幸い、彼女の経営する会社は、私の家と同じ地域にある。いつまでも家を空けるわけにもいかなかったから、その意味でも都合が良かった。  私は姪からペンダントを借り、村長夫婦にもうしばらく世話をお願いして、村を出た。  家に戻ってまたすぐ慌ただしく飛び出すと、ミスオーガンザが経営する会社に直接向かった。が、生憎彼女は不在だった。  冷静に考えれば、約束も取り付けず急に訪問するなど、たとえ本当にいたとしても取りつがれないだろう。だが、他にどうしようもない。怪しむ従業員に私は、どうにか言伝だけでもしてくれるよう頼んだ。  両親を事故で亡くし身寄りのない子供が、ミスオーガンザらしき肖像画のペンダントを持っている事。そして、その子供について相談したい、という事を。  それを伝えた私は、また明日の同じ時間に来ると言って、ミスオーガンザの会社を出た。  そして翌日、従業員に伝えた通り同じ時間にミスオーガンザの会社を訪れた。すると私は、門前払いされる事なく応接室へと通された。  少しお待ち下さい、と言われ、緊張しながらソファに腰掛ける。 (まさか、本当にミスオーガンザが……?)  私はまだ、自分の状況が信じられなかった。だが、こうやって応接室に通されたのだ。あのペンダントは、ミスオーガンザに関係している。  扉が開く音に、私は慌てて立ち上がる。扉の向こうに、鮮やかな色のスーツを見に纏った女性の姿が見えた。
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