1.手紙

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1.手紙

 兄が亡くなったという手紙が送られてきたのは、寒さが厳しい季節。送り主は、兄が住む村の村長だった。  魔族の女性と駆け落ちした兄とは、他の家族に内緒で手紙をやりとりしていた。おそらく村長はその手紙を見つけ、信頼に足る人物だと考え私に手紙をくれたのだろう。  手紙には、兄とその奥方は事故で亡くなり、ひとり娘だけが残された事、そしてできれば残された娘を引き取ってほしいと書かれていた。  私は当然引き取るつもりだった。妻も子供もいて、もうひとりくらい子供が増えても問題ないだろうと思った。  だが、妻は反対し、子供は怯えた。魔族と人間の混血……そんな子供とは一緒に暮らせない、と。  何度も説得したが、彼らは決して首を縦に振らなかった。もしこのままなら、離婚をして家を出てもいいとさえ言われた。  引き取る事を諦めた私だったが、せめて一目だけでも、姪に会いたいと家族に頼み、引き取らないのならという条件でそれを許された。  姪と会うのがいちばんの目的ではあったが、それと同時に奥方側の親族の手がかりを探して、引き取ってもらうよう連絡を取れないか……私はそう考えていた。  何日もかけてようやく辿り着いた小さな村。村長は私を歓迎してくれた。  そして、姪にも初めて会った。彼女は、私の顔を見てぽかんとした表情になり、それから私の足にすごい勢いで抱きついてきた。焦る私に、村長が目を細めて言った。 「あなたは父親にそっくりだからな……」  その言葉に、胸が痛んだ。
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