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 翼が中学三年生のとき、彼女の両親が離婚した。  父親が若い女性と駆け落ちしたのだ。  翼は幼い頃から父親によくなついていた。毎年父の日には、必ずプレゼントを送るほどに。  仕事が休みの日には、様々な場所に連れて行ってもらっていた。  翼の父親は、翼が門限を少しでもこえようものならば、いつも車で迎えに行っていた。  そんな父親が駆け落ちするなんて。翼は信じられなかった。翼の前では、父親と母親は、何の問題もなさそうに見えていた。  実際は違ったようだ。  翼が受験を控えた頃から、父親の帰りが遅くなった。それまでは、いつも同じ時間に帰宅していたのに。  母親は薄々気付いていたのだろう。  ある日、深夜のリビングから、父親と母親が言い合っているのを聞いてしまう。そこで、他の女性の存在を知ってしまった。聞いた話では、父親は出張先でも浮気をしていたようだ。  プライドの高い翼の母親は激昂した。自分以外の女性を愛する男なんて、夫とは呼べなかった。許せなかったのだろう。泣きながらすがりついて謝られても。  二人が離婚したのは、それから間もなくだった。
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