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「今日は引っ越しに協力してもらってありがとうございます!」
急いでお礼を言い、深々と浦井さんに頭を下げた。
引っ越し業者を使うつもりでいたが、この浦井さんが1人分の荷物ぐらいなら「オレのトラックにのるし、のせて運んだげるよ。友人の家族ってよしみで、飯一回奢ってくれたらいい」という、なんとも良心的な対価で自分の荷物を全てトラックに積んで運んでくださったのだ。
早速、自分と、兄と、浦井さんとで力を合わせて家具を運んだ。
重いのは冷蔵庫ぐらいで、それ以外は人間一人で持てる程度の折り畳みテーブルとかイスや分解して簡単に組み立てられる棚ぐらいだったので、3人でやれば荷物運びはあっという間に終わった。
そうして荷物を全部運び終えた時、俺は雑貨もろもろの入った段ボールの箱を置いていた山の傍に、茶色い紙でぐるぐるまきにされている見慣れない荷物が紛れ込んでいるのに気づいた。
「あれ、これ違う家族のじゃない?」
「ああ、それは僕からのプレゼント」
そう言って朗らかに笑ったのは、浦井さんだった。
「引っ越しのお祝い。テーブルの色を見たんだけどさ、丁度それと合うんじゃないかと思って。テーブルを畳に直で置くよりも、マットがあった方がいいかなって思って」
なんていい人なんだ。
「あ、あ、ありがとうございます!!」
兄は横暴だし自分勝手な人だが、こんな素敵な友人を持っていたとは。
浦井さんサマサマだった。
どんなマットか気になって、俺がウキウキ荷ほどきしようとすると「あ、待って」と浦井さんに慌てて止められた。
「その、今開けられると恥ずかしいから。僕が帰ってからにしてほしいな」
そう言って、少し耳を赤らめて頬をかく浦井さんはちょっと可愛らしかった。顔が整っている人だからか、照れる姿は愛らしいという言葉がとてもよく似合う姿だった。
「わかりました! 何から何まで、ありがとうございます!」
「そんじゃま、荷物全部運び終えたことだし、早速皆で飯でも食いに行くか」
深々と頭を下げてお礼を言っていると、兄がそう言った。
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