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『すみませんでした』
『うちの子、ちょっと変わってて』
『どうもご迷惑お掛けしました』
『また何かありましたら、お手数お掛けしますがお知らせお願いします』
ああ、今まで何度謝っただろうか。こんな日を繰り返すのも、もう疲れた。
保育園や小学校の先生、ママ友、外出先で会った名前も知らない人…
問題を起こす度に呼び出され、頭を下げる日々。
「お家に帰ったら、どうか息子さんとよく話されてみてください」
「はい、分かりました」
……何度も話したつもりだった。
けれど、効果がなかった。
息子のカケルは、来年中学3年生になる。
けれど、勉強は全くせず、友達と遊んでばかりで最近は帰りも遅い。その友達も、この地域では名の通る不良だという噂も聞く。
カケルは小さな頃から、いわゆる問題児だった。
人付き合いも下手で、自分の意志を押し通そうとするため相手とすぐに喧嘩になってしまう。他の子より少し体型が大きかったので、少し押しただけで怪我をさせてしまうこともあった。
その度に私は保育園や学校から呼び出され、担任と相手の保護者に平謝りしていた。
家で話そうにも、カケルはすぐに他のものに興味を持ってしまうから話が続かない。
夫は仕事で不在の日が多いため、ほぼワンオペ状態だったのだ。
「カケルー、ママと話そう」
「やーだよー」
「カケル、今日小学校の先生から連絡あってね、」
「遊びにいってきまーす!」
「カケル、進路の話なんだけど…」
「うっせぇよ、話かけんな!!」
どこで何を間違えたのか、私には分からなかった。
でも、もう考えるのも疲れてしまった。
だから、カケルに話しかけることも、次第に無くなっていった。
私が仕事から帰った時にカケルが家にいたとしても、スマホに夢中で何も言ってはこない。私もそれに対して特に注意することもない。
互いが互いを拒絶する。そんな、息の詰まるような毎日を繰り返してていた。
昔…カケルが生まれたばかりの頃は、暖かくて希望に満ち溢れた日々が続くものだと思っていたのにな。
あの頃、好きだったあの歌を口ずさみながら、幸せな未来を夢見たりしてさ。
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