だいすきのうた

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「…いたた」  気づけば私は横断歩道の真ん中で倒れており、目の前には、先程までカケルが着ていた制服と通学バックが転がっている。 「カケル……カケル!!」  そうだ、私達は車に撥ねられたのだ。 でも、おかしい。車が見当たらないし、事故が起きたというのに野次馬の一人もいない。何より強い衝撃を受けたはずの身体が、全く痛みを感じない。  とにかくカケルの無事を確認しなくては、と思い彼の荷物に手を伸ばした。 「!?」  カケルの制服から、フワフワした髪の毛と、小さな手が覗いている。 「え、カケル?」  急いで制服を捲ってみると、そこには生後1〜2ヶ月ぐらいの首も座らないような赤ん坊の姿があった。 「ええぇ!?」 「ふぇ、ぇ……おぎゃああああ!!!」  私が大声を出すと、赤ん坊も驚いたようで泣き出してしまった。 「えっ、えっ!?ご、ごめんねぇ!?ホラ、よしよし!」  とにかく、道路の真ん中に居続けるのはまずいと思い、急いで赤ん坊を抱き上げあやしながら歩道に避ける。  この子供は何なのだろう、カケルはどこに行ってしまったのだろう。動揺しながらも、腕の中の赤ん坊の顔をじっくり見てみる。  すると、あることに気が付いた。 「このホクロ…」  赤ん坊の目元に小さなホクロがある。これは、カケルにも生まれた時からあった。  それだけでなく、右太ももにあったアザも、てっぺんだけ少し薄い髪の毛も、生まれたばかりのカケルと同じだ。 「カケル…なの?」  そう呟いた私も、右手で自分の髪を払おうとした際にある異変に気付く。  長かったはずの髪が、短くなっている。  それに、先程まで傘しか持っていなかったはずの私は、リュックを背負っているのだ。 「何で、このリュック…」  赤ん坊をゆっくりと近くにあったベンチに制服と一緒に横たえ、リュックの中を調べてみる。  すると、中にはおむつポーチと粉ミルクと母子手帳が入っていた。 「……まさか」  母子手帳を開くと、そこにはカケルの名前が記されていた。
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