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その後、看護師が部屋に来て、改めて様々な検査を受けた。身体は痛み、しばらくは寝たきり状態になりそうだが、何とか時間の経過で回復できるだろうと言われた。
その話を一緒に聞いていたカケルは、安心したように頷いた。
「父さん、あと30分で着くってさ」
「そっか、仕事中なのに悪いことしちゃったな」
出張中の夫は、事故の知らせを受けてすぐに飛行機の手配をしたが、移動に時間が掛かりようやく空港を出られたようだ。
雨で車が混んでいる中、タクシーを捕まえてこちらへ向かっているとのこと。
「カケルもそこのソファーでゆっくりしときなよ。怪我してるし、疲れたでしょ?」
「あ、うん。…そうだね」
30分あれば、もう一眠りできそうな気がする。
また静かになった病室で、ふいに私は先程の夢の中で聴いた曲を思い出して口ずさむ。
♪
Skidamarin a dink a dink
Skidamarin a doo
I love you…
ワンフレーズ歌ったところで、カケルが反応した。
「その歌なに?」
「カケルは覚えてないと思うけどねー、赤ちゃんの頃、よくママが歌ってたんだよー?」
ニコッと笑いながら少しだけからかうようにカケルの方を見ると、カケルはぷいと目を逸らしてしまった。
「何よ、そこまで私のこと嫌がらなくてもいいんじゃない?」
そう言うと、カケルは意外なことを話し始めた。
「いや、さっき母さんが目を覚ます前にさ、俺もソファーでボーっとしてたんだけどさ。つい寝ちゃって…その時見た夢の中で、今の歌が聴こえてきたんだ」
「そうなの?」
「小さい頃、うっすらと覚えてたのかもしれない。……なんだか懐かしくて、それを聴くと、何とも言えない気持ちになってさ」
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