不協和音

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 毛むくじゃらの人面太陽が口遊んでいた歌は徐々に弱まっていった。衰弱も顕著となり、終焉――即ち、死が刻一刻と迫っていた。  1年、3年、5年と時間が過ぎ去るにつれて、顔面を覆い尽くしていた体毛は抜け落ちて地上を漆黒に染め、瘦せ衰えた顔が浮き彫りになった。  歌が聴こえなくなると、人面太陽は骨と化して地上へと墜落した。  骨は轟音と共に砕け散り、地上は一縷(いちる)の光をも通さぬ完全な暗闇に閉ざされた。  それから永い時が経ち、暗闇に閉ざされた地上を(うごめ)く無数の気配があった。  原初の生物かもしれないが、それを証明する術は無い。光が無く、認識する手段が存在しないからだ。  姿形さえ分からぬケダモノで溢れ返った地上は地獄と表現して差し支えなかった。  そんな地獄を祝福するかのように、不協和音な歌がどこからともなく響いて止むことがなかった。                                ―完―
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