潮風

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「颯くん、遊ぼ!」  マンションの一階で、あまねちゃんから声をかけられた。あまねちゃんは颯と同じ小学四年生。同じマンションの四階に住んでいて、颯は一階に住んでいる。階は離れているけど、ここに引っ越してきてからすぐ仲良しになった。 「いいよ!」  颯は白い歯を目一杯見せた。  あまねちゃんもにっこり微笑む。  颯らはエントランスから近くの公園に走り出た。 「なにして遊ぶ?」  公園にはブランコ、すべり台、ジャングルジム、砂場がある。 「ブランコで遊ぼう!」  誰も使ってないブランコが二人分あいていた。 「ちょうどあいてるわ」  あまねちゃんが真っ先に腰掛けてこぎ出す。  颯もすぐにブランコをこぐ。  五月の心地よい風が頬を撫でる。 「颯君はどこまで遠くに跳べる?」 「もちろんずっと遠くまで」 「じゃ、競争しようよ」 「いいよ」  二人は競うようにブランコをこいだ。高く高く。 「一、二の三で跳ぶわよ」 「負けるもんか」 「いくよ」 「一、二の三」  一瞬だけど、颯らは宙を舞った。  結果はあまねちゃんの勝ち。やっぱり運動神経抜群のあまねちゃんにはかなわなかった。 「次は何する」
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