二十歳

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居酒屋の廊下で五年振りの再会。 その子は中学の時の面影を残しつつ、化粧をしていることもあって少し、大人っぽくなっていた。 僕の第一印象はというと、相変わらず可愛くて安心した、だった。 けれど、五年経った今でもほっぺたが赤かった。 「今日も寒いね」なんて、当たり障りのない会話から始めて様子を伺う。 転校生は目立つから、僕の事を覚えてる?という質問に「もちろんだよっ」と笑顔で答えてくれたことで、僕の気分は一気に上がった。 ほっぺたが赤いのはお酒が入っているからだと思い「結構、お酒飲んでるの?」と聞けば彼女は、 「お酒は苦手で飲んでないの」 素面(しらふ)なのにほっぺたが赤いということは中学のころから変わっていないということなのか。 お酒も入ってテンションの上がっていた僕は、顰蹙(ひんしゅく)を買うことも考えず、勢いに任せて当時思っていた事を話してしまった。 ほっぺたが赤い子を初めて見た、と思ったこと。 田舎の子はほっぺたが赤いんだ、と思ったこと。 可愛い子なのにもったいないな、と思ったことまで。 そしたら、彼女は俯きながら、か細い声でこう言った。 [実は私……、赤面症なの」 え、ということは……。 僕は大学卒業後の進路を、地元の秋田に戻って就職することに決めた。 了
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