童話 天の頂(てんのいただき)

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 昔々の事である。  この世に人間が生まれ落ち、知恵(ちえ)()てからというもの、世界は人間たちが支配していきました。そんな中、人間たちは土地や食物を(うば)い合うようになり(あらそ)いが(おこ)りました。戦いの結果、最も強き者が皆を従える王となりました。  王はその傲慢(ごうまん)さゆえに空の上にあるとされる神の世界を目指す事にしました。高い高い塔の建設を民に命令したのです。その(さい)、王は大地にある土や鉱石をそのまま使う事を禁じました。一度加熱してレンガにするなどして、神の用意した大地の産物に(たよ)らないことで、自分こそが世界の王であると示そうとしたのでした。  塔の建設は順調に進んでいきました。何年もの時をかけ、地上からでは最上部が見えないほどに高く伸びていきました。王はその様子に大層喜んでいましたが、(いま)だ完成の目途(めど)がたたないことに焦りも生まれていました。王は発破(はっぱ)をかけるために自ら最上部へと向かいました。そして作業を行う者たちへ声を掛けようとした時です。 『(おろ)かなる人間たちよ。我が愛を忘れた者たちよ。これ以上の侵略(しんりゃく)を認めることは出来ない。我が(いかづち)(もっ)(ばつ)を与える。その痛みもまた我が愛であると知れ』  塔にいた王も、作業に従事(じゅうじ)していた民も、地上で田畑を(たがや)していた民も、頭に直接響いた神の声に(おのの)きました。そして次の瞬間。     ドガーーーーーーーーーーーーーン!!!  巨大な雷が塔へと突き刺さりました。塔はあっけなく粉々に(くず)れ、中にいた王と民たちは雷で黒焦(くろこ)げにされ、生き残った者もまた衝撃(しょうげき)で空に投げ出されて死んでしまいました。  地上に生きる人間たちも無事とは言えませんでした。雷は塔だけでなく、大地をも()いてしまったのです。そのため人間たちは離れ離れになった土地ごとに暮らさざるをえなくなったのでした。大地が分かれた後、人間の言葉もまた土地ごとに変化していきました。こうして神の思惑(おもわく)通りに人間の集団による力は分散(ぶんさん)されたのです。
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