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「気をつけてね」
染めたばかりの明るい茶髪を落ち着かなそうに指でつまみながら、幼い頃からの仲である彼女がそう言った。
目に涙は浮かんでない。
こういう場面で泣くような子では無い。
案じるような言葉も普段ははっきりと言わないから、かなり心配してくれていることが分かる。
「じゃあ、行ってくるね」
まるで近くのコンビニにでも行くかのようにそう言うと私は電車に乗り込む。窓から彼女を見遣るといつもと変わらない涼しげな顔をしていた。
騒がしい駅の構内に出発の音楽が流れる。
彼女に向けて私が手を振ると、彼女も手を振り返す。
景色が流れ出す。
ゆっくり、そして目にも止まらない速さで。
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