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「さっさとしなさいよ!!!!」
母親の汚く喚き散らかす声が聞こえ、同時に苛立ちを塊にして投げつけているかのような激しさで、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
うるさくて不快で、優雨は有線のイヤホンをリュックから取り出すときっちりと耳にはめた。
濁った底の見えない泥みたいなこの家とは正反対の澄み切った青空のような旋律がイヤホンから流れ出す。ベットの上で体育座りをしながら人差し指で膝にリズムを刻む。
刻むビートと歌うボーカル。
母親が未だに叫んでいるのがメロディーの隙間で聞こえる。ご飯くらい自分で用意すれば良い。
音楽が喚き声で汚れないように、音量をあげる。
スマホの音量ボタンを力強く押し込みながらふと彼女のことを思い出した。
私に音楽をくれたあの子は元気にしてるだろうか。
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