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深夜の誰も居ないアパートに自分の階段を登る足音だけが冷たく残されていく。
金曜の居酒屋はどうしてこうも忙しいのだろう。
日付が変わるまで無我夢中でバイトをこなした尊は、心身ともに疲れ果てていた。
こんなに疲れて帰るなら二階の部屋なんて選ばなきゃ良かった。
過去の自分の選択を呪いつつ、部屋の鍵を開ける。やっと自分の家だという自覚が芽生えてきた家の玄関を見て安堵したのか、深いため息が漏れる。コンクリートのように固く重い足からなんとか靴を引き剥がし、そのまま部屋までほとんど体を引きずりながら歩くと、床にそのまま寝そべった。
無機質な白い天井が見える。
「ただいま」
自然と漏れ出た自分の声が酷く掠れていて、思わず笑ってしまった。
このまま眠ってしまいたい。
甘い誘惑に流されるままに目を閉じると、幼かったあの頃の私たちが瞼の裏に浮かんだ。
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