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璃々奈は気持ちを前向きにして居間のスペースに運んだ荷物の前に座った。あまりに減った荷物は心細い。様々な手続きに追われている間に綺麗な箱に入れ替えられた荷物は何が無事だったかを本人が把握していないという異常事態に陥っている。正直怖い。でも、開けなければ進まない。璃々奈は覚悟を決めて一番上の箱を開いた。
「本、無事だった……良かった……」
璃々奈は思わず涙ぐんだ。好きなものがあれば頑張れる。勢いに任せて数箱になってしまったものを開けていく。奇跡的に本はすべて無事だった。DVDも。あと手元に残ったのは少しの服と貴重品が入った通勤バッグ。スマートフォンは修復不可状態に壊れたが、一部の友人や両親の連絡先は手帳に書いてあったからホッとした。
「本棚、テレビとDVDプレイヤー、スマホ、服、食器、ベッド……あ、防犯アイテムも見たい」
買わなければいけないメモを書きながら璃々奈は母の言葉を思い出していた。
『心機一転しろってことよ。今回のことは災難だったけれど、強制的に身軽になった。むしろ、足りないモノだらけになった。今の自分に必要なもの、欲しいものを改めて考えながら楽しんでみたら』
璃々奈は相変わらず心細くて、無くなったものに不安になるけれど少しずつだけれど楽しめそうな自分を感じていた。思い出の品は無くなったけれど、記憶の中にちゃんと残っていると気付けたからかもしれない。
璃々奈は買い物に行くために外に出た。まだ手付かずの場所ばかり。外も、中も。これから自分の家にしていくんだ。新居の鍵を閉めると鍵につけた鈴がちりんと明るい音を響かせた。
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