ゴースト&トゥルーエンド

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 まずは二人で、ボーイが悪の組織に潜入してから結末までの流れを想像しまくった。それらの中から二人ともの琴線に触れるものをピックアップして物語として組み上げ、ネームと呼ばれる大まかな下書きを作っていく。ユウタ君は俺が原稿用紙に引く線一つ一つに興味津々だ。 「漫画ってこうやって描かれるものだったんですねえ。面白いです」  感心しながらもコマ割りについての意見を口にするユウタ君は、頼もしい共同制作者だった。やがて二週間ほどかけてネームを完成させ、作画作業に入った。俺の絵柄はデュクシ先生の路線とはだいぶ違うので寄せるのに苦労したが、ユウタ君は寛大にも「酒木さんの絵柄もかっこよくて好きですから、無理に寄せなくても大丈夫ですよ」と言ってくれた。作画作業は本当に大変なので遠慮なくその言葉に甘えることにして、地道な作業を延々と行う。  ペン入れに入り、注意深くベタ塗りをしている時、ユウタ君は自分のことを少しだけ話してくれた。どうやら大学生活を満喫していたと言っていたのは嘘だったらしい。 「僕が好きな漫画って、どうも子供っぽかったみたいで……漫画好きが集まるサークルに入ったんですけど、話が合う人がなかなかいなかったんです。みんな自分の好きな作品に夢中だから、おすすめしても読んでくれませんし」  仕方なくインターネットで共通の趣味の人たちと細々とやりとりするくらいしか出来ず、もっと面と向かって人と盛り上がりたいと思いながら過ごしていたのだという。 「だから、酒木さんが一緒になって楽しんでくれて、本当に嬉しかったんですよ。成仏できるできないに関係なく」  そう言って、彼ははにかんだように笑った。
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