1人が本棚に入れています
本棚に追加
5
アルバイトをする日以外は、暇を持て余してパソコンに向かうか昼寝をする毎日。
ギリギリ生きていけるし、金を稼いでもやりたいこともない。
パソコンに向かっていると、昼間から遊んでいる奴なんか自分と同類が多いと思う。
そして大抵性格が自分のように暗くねじ曲がっていく。
思考がネガティブになると、途端に眠気が差す。
移動するのも億劫なので椅子にもたせて、ひっくり返ったまま目を閉じた。
胸を打つ鼓動は虚しく、頭にもやがかかったように意識が薄れていく。
高校を卒業してからは、スマホに連絡してくる友達とも疎遠になってしまった。
変わり映えしない部屋に、鬱屈した気分を吐き出し、また吸い込む。
最低限、自分の食いぶちくらいは稼がないと親がうるさいからバイトをする。
ズカズカ入ってきて、商品にベタベタ触り大声で笑う高校生や、何も買わずにイートインに屯してスマホで動画を見て笑うギャルなど、人様に迷惑をかける分だけ自分より酷い。
テレビをつけると、ブルジョアなニュースキャスターやタレントがペラペラまくし立て、動画サイトでは人を驚かして目を惹こうとするクリエイターと、派手なだけでどうでもいい広告が溢れかえる。
半分は妄想で、物事を悪くとらえているだけだと分かっているから、なおさら気分が塞ぐ。
結局俺が悪いのか。
ひとしきりクヨクヨ悩むと気分が楽になって、またパソコンをつけた。
「黄金スピンクス ───
新開発のAIで歌が上手になるのか」
幸せをイメージさせるビジュアルもいい。
「へえ。
面白そうだな」
画面に映し出された広告動画を拡大すると、恍惚の表情でアイドルが歌っていた。
連絡先の電話番号と共に「今なら無料体験実施中」と書かれていたので、しばらく逡巡した。
何をやっても、イマイチ楽しくないし一日おきくらいに憂鬱になるから、そろそろ病気になったかと思い始めていた。
さすがに病気は嫌だ。
スマホを取り上げ、番号を叩くまでに時間はかからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!