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3 その夜も
「戦にございますか?」
私は陣図の元に近づいた。
「あぁ、ところであの噂を知っておるか?」
「あの噂とは?」
私は当然のように聞き返す。
「あぁ。
この間の戦にて、我が軍は敵軍の罠を見破った。
そこで各国の間で、俺には強力な軍師が付いていると言うのだ。
そう言う噂よ。」
「もしかして…私の事でございますか?」
「そうだ。
まさか、軍師が後宮の姫とは誰も思わんだろうがな。」
「それで、今度の戦は?」
私は身を乗り出す。
「そなたも不思議なおなごよな。
戦の陣に興味があるのか?」
「戦国全般の知識に興味がございます。」
私はキッパリとそう言った。
「今回の陣図はこれだ。
さぁ、いかに攻略する?」
【陣図】
⦅山⦆
⦅山⦆ ⦅山⦆
⦅山⦆
★
★
★ ★ ★ ★
★ ★ ★ 蜂矢の陣・5万
★
☆
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 魚鱗の陣・2万
とあった。
一目見て私は言う。
「不利でございますね。」
「そうだ。
圧倒的不利だ。
我が軍はかき集めても2万ちょっと。
対して敵軍は5万の軍を操っている。
さぁ、どうすべきか?」
「陛下が初手を誤らなければ問題ございませんわ。」
「?
どう言う意味だ?
俺にも分かるように説明せよ。」
陛下はおっしゃる。
「良いですか?
スターツ様。
敵軍がこの蜂矢の陣を取れるのは、この山を越えてからでございます。」
「?
だからなんだ?」
「鈍うございますよ。
敵軍は山々を越えてやって来るという事です。
その時果たして5万の隊列を組めるでしょうか?
山谷に阻まれて、敵軍はおそらく1万ほどの隊列に分けて歩むでしょう。
5万と2万ならば勝ち目は無いが、1万と2万ならば、さて、どうか?」
私はニヤリと笑い挑むような口調で言った。
「なるほど!
山を越えているところを狙い撃つわけか!」
「その通りでございます。
この山地は我が国の内部。
なれば、山賊や商人、農民をお使いなさい。
スパイさせ、どのような道のりでくるかを報告させるのです。
金貨1枚も出せば喜んで力になるでしょう。」
私は続けて言った。
全ては、戦国ゲームで身につけた知識であった。
だが、スターツ様は偉く関心され、そのまま軍の指揮に戻ったのだった。
♦︎♦︎♦︎
数日後、堂々たる凱旋をした陛下の姿が窓から見えた。
しばらくお見えにはならないだろう。
そう思っていた。
すると…
しばらくして、陛下が鎧兜姿のまま現れた。
「まぁ、陛下?
次の戦がもうあるのですか?」
私は驚いて言う。
しかし、そうでは無いらしい。
「あほぅ。
そんなに頻繁に戦があってたまるか。
そなたに褒美を渡したいのだが、そなたは何を贈っても喜ばぬだろう?
何かしたい事など無いか?」
陛下はおっしゃる。
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