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縄を解かれた深雪の代わりに、両腕を柱に回すようにして後ろ手に縛られ、足も拘束された。太くて頑丈な縄は簡単に切れそうになく、加えて燃えないような特殊な物だということも予測出来た。
要するに、抜け出すことはかなり困難だ。
「彼女をこの場所から逃がして」
「さっきからまるで自分はどうなってもいいみたいな言い方をしますね」
「大切な人が傷付くのが嫌なの」
「それで自分が死んでも?」
「人を巻き込むことは好きじゃないから」
男の疑問に淡々と答えれば、突然頬に熱が走った。銃弾が頬を掠めたのだとすぐに分かり、生温かい感触がそこを伝っていく。
「偽善者め」
「……」
「まぁ、いいでしょう。あまり一般人は巻き込みたくないので、彼女は逃がしてあげます。こちらは貴方を殺せればそれでいい」
「…麗っ!」
猿轡を外された深雪が私の名前を叫び、別の男に腕を掴まれて無理やり引っ張られる。
涙を浮かべながら私を見つめている姿に酷く胸が痛んだ。
「乱暴にしないで」
「うるさいですね。その舌を切り落としてやりましょうか」
男はナイフを取り出して、拘束されている私の前にしゃがみ込む。そもそもなぜこんな風に命を狙われるのか。訳も分からずに眉を顰めた。
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