引っ越し宝くじ(実は化け猫)

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 彼には恋することに、恐怖感のようなものはあったのだ。それを克服するのには一年かかったが、  去年の春に恋した女にふられて次の年になるまで異性にも同性にも恋できなかったのだ。  春になって就職したての職場同僚の娘に恋のような感情を持った。  なんかいいな、とたつひこは思った。  勇気を出して職場で昼の弁当を一緒に食べてみた。話してみると性格はよさそうだなと彼は思った。 「君付き合っている男とかいるの?」たつひこは聞いてみた。 「いません」  彼女の名前はけいこだった。 「僕の彼女にならない?」 「いいのですか?」 「オレはうれしい」 「私なんかでいいの?」 「君みたいな人は好きだな」 「いいのですか?」 「いいです」 「理想だと思う」 「いいですね」 「本当にいいの?」 「うれしいです」  今度こそしっかりとけいことの仲を実現しようと彼は決めた。  一日の仕事は終わって彼はけいこと挨拶をして別れた。たつひこは気分よく車を走らせていた。  帰宅後寛太に餌を食べさせて、彼も食事をした。
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