引っ越し宝くじ(実は化け猫)

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「うちの子も幸せですね」 「まだ生まれていないよ」 「生まれています」 「何?」 「寛太は私の子です」 「君は猫か?」 「はい」 「君は人ではないのか?」 「人です」 「何だ、冗談か」 「本当は猫です」 「猫?」 「はい」  たつひこは猫と結婚したのかと少し気味が悪くなった。 「何か冗談にしては本気にしてしまうけど」 「本気にしていいですよ」 「本当のことなのか?」 「それは自由ですよ」 「何?」 「猫ですから」 「知るか」  彼は笑っていた。 「寛太は育ちましたね」 「育ったな」  彼は少し変だなと思った。 「ここに住んで子供ができたらどうしますか?」 「それもそうだな」 「ここはワンルームでしょ」 「引っ越しをしようか?」 「そうしましょう」  元に住んでいたアパートの二百メートル圏内のマンションに引っ越しをしたのだ。  宝くじを引いたら、一万円当たった。素晴らしいことだと彼は喜んだのだ。  時々けいこは寛太のことを「私の子」と呼ぶので不思議だった。 「本当に生んだみたいなことを言うね」 「だって本当だもの」 「面白いけど少し怖いな」 「私は猫だから」 「猫?」 「かもしれないな」
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