24人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
1 夫・宏輔
★
あと二時間ほどで、昼が沈んでいく。
助手席では妻の綾乃が、まだ青々しい水平線をぼんやり眺めていた。
往路よりもかなり軽くなったワゴンタイプのレンタカーは今、僕と綾乃だけを乗せて朝来た道を戻っていた。
「とうとうふたりに、なった、ね」
運転中の僕に首だけ向けて、少し困ったような笑顔を見せる。
あはは、とどこか誤魔化すような綾乃の素振りを視界の端に捉えて、僕は戸惑ったまま「そうだね」と返した。
最初のコメントを投稿しよう!