2 妻・綾乃

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2 妻・綾乃

   ☆    太陽が沈むまで、まだ二時間もあった。  運転席では、夫の宏輔がはにかみながらハンドルを握っている。  一人娘の咲の引越し荷物を吐き出した車は、がらんどうで何か寒々しい荷室の空気で充満しかけている。 「18年ぶりだ」  正面を向いたまま、宏輔がぼそりと呟いた。  こほん、とちょっと気まずそうに誤魔化すから、私は「そうだっけ?」ととぼけて見せた。  
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