1.その世界の終わり

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1.その世界の終わり

その世界の名を、『平和(フリーデン)』といった。名前の通り、その世界は平和だった。人々は、争いの根本となる、妬みや恨み、憎悪の感情を抱かず、いや、知らず、誰もが平和を願っていた。まさにユートピア、九割九分の人類がそんな世界を望むだろう。しかし、そんな平和な世界は、音を立てて崩壊した。後に平和(フリーデン)の人々から『魔王』と呼ばれる一人の青年、ノヴァ・ストラによって。彼は力を持っていた。世界を一つ、崩壊させられる程の力を持っていた。なんとも信じられない話だろう。たった16歳の青年が世界を一つ壊した、誰もがその事実を認めなかった。 ───走っても走っても漂う、あの血なまぐさい匂い。老いも若きも泣き叫ぶカタストロフィー。それが人々に無理やり事実を認識させた。 僕も信じられないよ、我ながらね。 ───こうして平和(フリーデン)は滅亡した。ノヴァも死んだ。皆、臓物を曝け出して、白目を剥いて、痛くて、怖くて、恐れて、絶望して、初めて憎んで、初めて憎悪を宿して、死んだ。人々は憎しみの感情を知って、死んだ。 腹の奥から沸々と溢れる熱いなにか。初めて目から血流が流れ、握りしめた拳からも爪が食い込んで血が流れた。 「この煮え滾る何かをどうにかしてくれ」 そんな誰かの願いに、神は応えた。 平和(フリーデン)の『勇者』であるカルト、そしてカルトの幼馴染であるナナ、ソルト。 その三人は、転生した。 ただし、何の悪戯か、ノヴァも含まれる。 この日、『勇者』は、 初めての『復讐』を決意した。
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