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取り残された吾輩は、それからもこの公園を根城にして周囲の奴らに目を配っていた。近所には虎視眈々とここを奪おうとする輩がいる。何度となく睨み合い、時には取っ組み合いをすることもあった。そして縄張り争いに勝利し、今に至るのだ。
外の世界には他にも多くの敵がいる。その中でも苦手なのは〝じどうしゃ〟だ。奴は吾輩の命を脅かす危険な相手だ。我が物顔で道を塞ぎ、狂ったように暴走する。さらに、こいつの背後に近づくと鼻がムズムズする妙な匂いがするのだ。この公園にいる限りはあまり出くわすことはないのが唯一の救いだ。
今ではこの場所に連れてこられたことは良かったと思っている。ここでの気ままな生活を大いに気に入っているからだ。
遠い記憶の中のかつての飼い主は、吾輩の面倒を見切れなかったのだろう。むしろ、彼女のように毎日食べ物を献上する人間の方が珍しいのだ。
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