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「えっ‥」
女は、信じられないという顔を見せる。
(不思議そうな表情ですね。まるで、私しか知らない事なのにという顔をしている。当たり前ですよ‥私は、あなたの心を反映する鏡ですから)
声は、女の心にある隙をかいくぐる様に、女に話しかける。
「私の鏡‥」
女はため息混じりに呟いた。
(あなたの話をしましょう‥)
声は、再び、女に向かって、こう言った。
(あなたの思いは、屈折しているかもしれない、人には理解されないかもしれない。でも、あなたには、あなたの意思があり、大事にしてきたものがある。だから、あなたの話をしましょう‥)
その瞬間、女には、このセピア色に染まる空間に聞こえてくる冷徹な声は、自分を理解してくれる、優しい声に聞こえていた。
しかし、声との対話は、女にとって、そんなに優しいものではない事を、女が知る事になるのは、まだ、少し先になる。
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