2人が本棚に入れています
本棚に追加
(なるほど‥今の家族の幸せな時間は、あなたにとっては、偽りの日々だったと言いたいのですね。)
声は、女に対して問いかける。
「幸せを感じていた‥」
女は、声に対して答える。
(矛盾してませんか?それならば、あなたが死を選ぶ理由が見当たらない。)
声は、女の答えに、疑問を投げかける。
「幸せを感じていた‥それは間違いじゃないの。でも、そう思えば思うほど、私は、毎晩の様に、彼に対しての罪悪感に襲われる‥」
確かに、女は、彼の死を乗り越えた先に、幸せを見つけて、確かに、幸せになっていた。
しかし、その幸せは、女が自分で乗り越えて手にしたものではなく、他力本願に生きてきて、たまたま旦那に巡り合い、たまたま、手にしたものなのだろう。
だから、手にした幸せに疑問を持ち、常に、死んだ彼とのあり得ない未来との比較を繰り返してきた結果が、今回の行動に繋がったのだろう。
「わかりました‥では、あなたの忘れられない彼は、どうして亡くなったのでしょうか?」
声は、女に、新しい疑問を投げかけた。
「彼は、紛争地の子供たちに学びを教えに行ったきり、私の元には帰ってこなかった。」
女はセピア色に染まる空を見上げながら、遠い目をして話しだした。
最初のコメントを投稿しよう!