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普通、こういう瑕疵があった場合には契約時に申告義務というものが生じるはずなのだが、不動産屋からそんな話は微塵も聞いていない。
まあ、某サイトの情報によると、俺の住んでた部屋の番号は記されていなかったので、部屋単位で見ればギリギリ事故物件じゃない…という、極めてブラックに近いグレイな判断をしてくれたのかもしれない。
なるほどな……申告はなかったが、ボロとはいえ、どうにも家賃が安すぎやしないかとなんとなく思っていたのだ。その理由は、つまりそういうことだったというわけだ。
また、そんな所なので心霊現象の話にも枚挙に暇がない。
金縛やラップ音は日常茶飯事、勝手に風呂の水が出たり、こげくさい臭いがしてきたり、孤独死のおじいちゃんや自殺した女が夢枕に立ったり…と、まあ出るわ出るわ、ありとあらゆる心霊現象が頻繁に起こっている。
それに、霊障というやつだろうか? 住人達にも実被害があったらしく、精神的に病んでしまったり、重い病気にかかったりする者が続出し、中には突然、行方不明になったなんてケースもあったようだ。
で、なんでそんなにもいろいろあるのかといえば、一説にそこが事故物件以前にもと墓地だった〝忌地〟であるとか、〝霊道〟──霊の通る道の真上に建っているだとかも言われている。
しかし、かくいうこの俺も実際そこに住んでたわけなんだが、別にそんな悪い雰囲気は感じなかったし、この通りにピンピンしている。
たとえ自分の部屋で人死が出ていなかったとしても、ここまでヤバイとこならば何かしらの影響があってもいいと思うんだが……。
「御札とか貼ってなかったの? 前に住んでた人が高名な霊能者に頼んでお祓いしたとか?」
大いなる疑問に俺が取り憑かれていると、奥さんがその理由について仮説を口にする。
「いえ、霊能者は知りませんが、御札なんて一枚も……あ、そういえば御守り……」
その言葉に首を横に振ろうとした俺であったが、否定しかけたところでふと、ある思い当たる節が脳裏をかすめる。
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