2人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
観客の視線が二人に集中し、劇のクライマックスに近づく。
僕たちは一層息を合わせて動き、観客の心を掴む演技を続けた。
「この瞬間を楽しもう」
と彼がもう一度ささやく。
僕はその言葉に勇気づけられ、全力で彼と踊り続けた。
見せ場である踊りが終わると、いよいよ劇の終盤になる。
それと同時に、僕はとても寂しくなった。
(あぁ、もう終わっちゃう。幸也との、幸せな舞台が)
きっと。
きっとこの劇が終われば幸也は今度こそ僕から離れて好きな人のもとへ行ってしまうんだろう。
そう考えたら、まだ終わっていないのにジワリと涙が浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!