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「ではお休みなさい」  布団を整え、遡北は辺りを照らしていた蝋燭を吹き消す。  紫亭は騙された、と直感で感じた。  遡北が外で寝るのはいけないと思い、止めた訳だが、遡北は初めから止められるのを知っていたかの様に振る舞っていたからである。 「ねえ、遡北」 「何でしょう」 「最初から外にいく気はなかったでしょ?」 「ばれましたか」  遡北は悪びれる様子もなく認める。 「私だって寒い日に外で過ごしたくありません。こうして貴女の隣で寝る方が……」 「もう私寝るから!!お休み!!」  遡北の言葉を遮る様に言葉を被せ、紫亭布団で耳を塞いだ。  真っ赤になりながら、今夜は寝れる気がしないと心の中でため息をつく。 「はい、お休みなさい」  紫亭の態度に遡北は苦笑する。  眠れないのは遡北も同じだ。  紫亭は布団の中で羊を数え、遡北は窓から月をぼんやりと眺めていた。  夜が更け、月も見えなくなる暗闇が訪れた頃に紫亭は眠りにつく。  が、浅い眠りである。  隣で物音がすれば目が覚めてしまう程に……  布の擦れる音が聞こえ、紫亭は目覚めた。  物音のする方を見ると、遡北は起き上がっていて、着替えているところだった。  ぼうっと見ていると遡北が紫亭の名を呼ぶ。 「紫亭様、起きていらっしゃるのですか」  悪い事をしている様な気がして、紫亭は咄嗟に目をつむる。  気付かれているだろうと思ったが、暗闇のおかげか遡北には気付かれなかった。  遡北は手際良く長髪を束ね、(かんざし)をさす。  紫亭を数回か揺すった(のち)起きないのを見て、遡北は外衣を羽織り、そっと外に出た。
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