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 ほぼ一睡もしないまま、紫亭は起き上がる。  外衣を羽織って外に出ると洛惜は既に起き上がっており、食事の準備をしていた。  紫亭も黙って手伝う。 「おはよう、良く眠れたかい?」 「一睡もできなかったわ」 「へえ?」  手を動かしながら洛惜は揶揄する。 「姉さんが思っている様な事は起こってない」  まだそっちの方が気持ちは軽かったのかも知れないと紫亭は思う。 「何?喧嘩でもした?」  のんびりと言う洛惜を見て、平和ねと紫亭は心の中で呟いた。  なぜ遡北はこの平和を守るのを辞めようとするのだろうか。 「ううん、してない。ただ、少し慣れないだけ」  遡北が何を考えているのか、一晩考えても紫亭には全く分からなかった。  せめて何か言ってくれたら、と思う。  だが自分も遡北に同じ様な事を言われていた事を思い出し、紫亭は不平を言えなかった。  ふと、紫亭は昨夜に拾った包みの事を思い出す。  あれはもしかすると手がかりになるのかも知れない。 「おはようございます。二人とも随分と早いですね」  背後から遡北の声を聞いて紫亭はどきりとした。  たった今、包みを取りに行こうと思ったからである。 「はいはい、おはよう。お前もひょっとして寝てないのか?」  洛惜の言葉で紫亭は遡北の顔を見る。  遡北の目の下に隈が出来ていた。 「ええ、少し慣れなくて」  お前もかと洛惜は呆れた様に呟く。  遡北は曖昧に微笑んだ。
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