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 朝食を食べ終わり、紫亭は遡北の目を盗んで拾った包みを調べる。  薄い薬包紙に包まれた茶色の粉だったが、匂いを嗅いて紫亭は顔を顰めた。  遡北に飲めと渡された薬の匂いがしたからだ。  そういえばこの薬が何の薬か未だに知らないなと紫亭は思いつつ、先週の出来事を思い出す。  自分が丸一日寝ていたあの日から、遡北は紫亭に薬を飲ませるのをやめた。  なぜなのか気になったが、薬を切らしてしまったのでと遡北は答える。  紫亭もあまり薬を飲みたくはなかったのでそれ以上言及しなかった。  あんな色と匂いしてるから毒だったりして……  紫亭はあははと笑う。  自分のこのありえないような妄想は馬鹿らしかったし、仮に毒だとしてもこんな(あらわ)に毒を盛る人はいるだろうか。  ところが紫亭は直ぐに笑えなくなる。  薬の性能を調べようと、鼠に薬を与えるとあっという間に動かなくなってしまったからだ。  呆気なく死んだ鼠を見て紫亭は思考は止まる。  本当に毒?  それとも鼠に与えすぎてしまっただけ……?  薬と毒は紙一重ってよく言うし…… 「ここにいらっしゃったのですね。探しておりましたよ」  穏やかな声に紫亭は震え上がる。  もしかして薬の事がばれてしまったのだろうか。 「何か用?」  鼠の死体を隠しながら小声で聞く。 「ここ暫く薬を止めていたのですが、同じ種類の薬が見つかったので服用して頂ければと」  そういって遡北が紫亭に渡したのは、紫亭が拾った薬と全く同じ色の薬だった。  昨日遡北は薬草についての本を持って帰ってきた。  あれはひょっとしてこの薬を探す為に……  紫亭の顔色は蒼くなる。  まさか遡北は本当に……
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