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夜が更けた頃に紫亭は目を覚ました。
いや、正確には起こされたと言った方が良い。
遡北が絶えずに紫亭の体を揺すっていたからだ。
「ん……遡北……?」
まだ眠いのか、ぼんやりと遡北を眺めていた。
「紫亭様、もう一日以上眠っておられますよ。そろそろ起きた方がよろしいかと」
「一日も寝てたの?」
朦朧とした意識ははっきりとしてきて、紫亭は飛び起きた。
長時間寝た後の、心地の良い痺れが全身に広がる。
確かに長い間寝たなと紫亭は納得した。
「ええ、昨日の午後からずっと」
遡北の声が微かに震える。
「このまま起きずにいたらどうしようかと思いましたよ」
平静を装っているも、体は震えていた。
「遡北、心配かけてごめんね」
紫亭はぎゅっと遡北の手を握った。
遡北の手は氷の様に冷たかった。
「最近上手く休めてなかったからその疲れがどっと来たのかも。充分寝たからもう大丈夫だよ」
「本当ですか?」
「うん、体も軽くなった。本当に疲れただけ。体調は大丈夫よ」
「……本当ですね?」
「ええ」
「では、上手く休めない原因を教えて下さい。それさえ取り除けば私も少しは安心できます」
「過保護ね……」
紫亭は小声で呟いた。
幸いそれは遡北の耳には届かなかった。
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