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──世界は混沌から始まったという。
天と地の区別はなく、ありとあらゆる物質が一箇所に集まる事で創り出された黒い靄こそがこの世界の最初の形態だ。
その靄から生まれた、名を盤古という巨人がいる。
数千年眠ったのちに目覚めた盤古は、暗闇しか感じられない混沌とした世界に対して窮屈さを感じ、怒りを覚えた。
そこで手探りで見つけた岩と巨木を組み合わせて武器を作り、黒い靄を晴らそうと一心不乱にその武器を振り回した。
最初の一振りで黒い靄は二つに分かれ、軽い物質は上にいき、重い物質は下に沈んだ。
二振りすると光を放つ物は上に舞い、闇をもたらすものは下に行く。
三振り、四振りと武器を振り回すごとに世界は二つに、即ち「天」と「地」に分けられていった。
きっぱりと二つに分けられ、見晴らしのよくなった世界を見て盤古は満足げに微笑んだ。
ところが分けられたばかりの世界はまたすぐにもとに戻ろうとする。
天と地の距離はまだお互いを関与しないほどまでに離れていなかったからだ。
そこで盤古はもとに戻ろうとする二つの物質を分かつべく、下に沈む「天」を両手で支え、上に浮く「地」を両足で踏みしめた。
渾身の力を込めてそれぞれを押し戻した。
そうして「天」と「地」は盤古に押し戻される事によって一日一丈ずつ遠のいていき、二度と付くことのできない遥か彼方まで離れていった。
遠のく天と地と共に盤古の体も一日一丈伸びていく。
これは数千年にも渡る作業。
巨人といえども、世界が完全に二つに分かれた時には盤古は疲弊しきってしまい、再び眠りについた。
眠りについた後、彼の体に変化が起こる。
彼の吹き出す息は大地を駆け抜ける風となり、声は空から落ちる雷となる。
両目は太陽と月に変わり、四肢は東西南北を示し、流れる血液は川、流れる汗は万物を潤す雨と化した。
倒れている彼の側には天と地を斬り分けた武器、「開天斧」が大地に刺さっていた。
いつしか「開天斧」は力を持つ人の象徴となり、世界を統べる者、「覇者」と呼ばれる人のみが持ち上げることのできる武器となった。
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