おかあさん、あのね

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おかあさん、あのね 毎朝お弁当を作ってくれるところが好き 私よりも早く起きて 美味しくなりますようにってきっと思いながら 作ってくれるお弁当が好き だけどほんとは できたてのあったかい料理が好き おかあさん、あのね 毎日くれる「頑張ってね」が好き いってらっしゃいの変わりに 振り向いて、「頑張ってね」と差し出してくれる おかあさんの手が好き 行ってきますと自分の手を一瞬重ねる あの瞬間が好き おかあさん、あのね いつも怒られるのが嫌い 自分が悪いってわかってても 自分が悪いって自分で一番わかってるから 怒られてばっかりの自分が嫌い お母さんの棘ついた声が嫌い お母さんの「勉強しなさい」が嫌い おかあさん、あのね たまに息苦しくなるの お母さんの子どもでよかったのかなと思うの うちに居場所がないような気がして 私がお母さんを追い詰めてる気がして どんどん厳しく怖くなっていくお母さんが嫌い だけど全部 私のせいで苛ついちゃってるんだと思うと そんな自分が大嫌い おかあさん、あのね それでも私が夜泣いてたら 気づいて来てくれるから 隣の部屋で寝てたのに 私の細い泣き声がなんでわかるんだろう ぼろぼろ泣きながら抱きついた おかあさんのお腹があたたかかった おかあさん、あのね おかあさんのことがたまに嫌いで たまに嫌になるけどね だけどほんとに大好きだよ ほんとは大好きだよ おかあさんがやさしいってこと、しってるよ 生んでくれてありがとう おかあさん、あのね あのね ……あのね。 おかあさん、あのね いつもありがとう。
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